5月の連休が終わるのを、待っていたかのように木々は、いっせいに芽吹きはじめた。
山も森も、煙るような薄黄緑色の美しい衣をまとう。草花は咲き乱れ、小鳥のさえずりは高く、野の生命があふれんばかりだ。
こんな季節を待っていた。そろそろ、定年釣り師の出番ということだ。
そんな折、僕の気持ちを読んでいたかのようにロッド工房「カムパネラ」の宇田さんが、ふらりと訪ねてきた。
「連休も終わったし、どう二人でのんびり川を歩こうよ。どっか、いい川ないの」
「いいね。祖父(じい)さまの道連れですか」
彼と釣りをするのは久しぶりだった。
おしゃべりしながらコーヒーを飲んだりしていたので、家を出る頃には昼近くになっていた。どうせ散歩がてらの釣りだ。 |