芽吹きの季節から、森や谷は少しずつ緑の色を濃くしていく。谷あいに、蝉時雨の声がこだまする。そろそろ、初夏の気配だ。
そうなると、いよいよ山釣り季節なのだ。緑色の絵の具を溶かしたような、谷川をゆっくりとロッドを振っていく。
緑陰からチロチロと、こもれ日が川面をなめていた。一歩、また一歩と谷の奥を目指す。 浅い流れを、ザブザブ音を立てながら歩いていく。さっと、黒い影が岩陰からとびだした。しまった。でかいイワナだった。
足音を殺して歩かなければ、魚は釣れないのだが流れを蹴散らしていくのは、たまらなく気持ちがいいのだ。 |